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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
彼らにとっては第一に訊きたいこと、ただそのことのために帰って来た邦夷らは、事情が許せば着くより早く語りたいこと。一方は今か今かと待ちわびた。他方はまだまだと控えている。しかし、どちらも、正式に口に出さない理由を感じ取っていた。話の出るのが遅れれば遅れるほどお互いの考えは遠く背馳するのではなかろうか。それとも、そもそも結びつけ得ないほど異質なものになっていたのか。
邦夷は口をひらかなかった。もしまた開いたにしても、この席のこの時刻ではすでに機を逸していたかも知れぬ。話は順序もなく、推量を加えて拡がりつつあった。酒が彼らの口をほぐして行った。酔いがその言葉を強めていた。彼らの儕輩の中島元八がそれを裏付けていた。そして、嘘も隠しもない事実が、人々の気持ちなりに、次第にさまざまな翳をつくっていた。
それもまた邦夷は見えていたにちがいない。
広間のなかばどころは、お武頭を中心にした藩士のひと塊りであった。つい先ほど、彼らの前を篠崎彦助がよろめき通ったのであるが、それを見つけた彼らの反応にはある種の気配があった。
一人の藩士が刀を提げて立った。特にそれだけが目立ったわけではない。