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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

もり立てる勇も智も持ちあわせてはおらんのか、つづいての尿前ではまたしても総敗陣――鎮守府将軍八幡社に顔向けが出来ようか、われらの城地にこの神を勧請された政宗公に何とお詫びをいたされる、ばかめ、ばかめ、よくもおめおめ戻って来おったな、武士の道というものは――お家の安泰というものは――」

――それは戦いに勝つことであった、と、そう云いたかったのだ。が彼は云わなかった。云えなかった。あの日の痛恨がよみがえって咽喉がつまった。その場にぴたりと坐ってしまった。畳の上に刀を置き、懐紙をだして鼻をかむのだ。ふいに海の底のような静かさであった。肌さむい晩秋の夜が更けていた。

ながい間彼らはだまっていた。

油のもえる音が聞えていた。

阿賀妻は寒けをおぼえた。酔がさめたのだ。やがて彼らの一人が低く云った。

「しかし、ご家老――」

「わかっている」と彼もおだやかに答えていた、「それはみんな済んだこと、と、おぬしは云いたいのじゃろう、いかにも済んで了うた、済んで、このような窘窮が来たのじゃ、打開の道を、われらは蝦夷への移住と考えた、したが、おぬしらは、それを薩長政府への愁訴と考えておる、一万五千石を六十五石に削った政府――家臣七百名の士籍を剥奪し、ご同様、当日より路頭にまよわしめた政府――その政府におぬしらは哀願しようともくろんで