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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
疑いぶかく、羅卒は眼をほそめて凝ッとこちらを見た。
「陸前からまいった」
「陸前? ふーう、いつわりではなかろうな」
「何しに、――」
話をすたッと断ちきるようにそう云い、阿賀妻は一足まえに出た。羅卒はけおされて傍らに避けた。思わず道をひらいて通して了ってから、彼はおどろいてその後を追った。いつの間にか言葉が改まっていた。
「どなたにご用でしょうか」
「そなた、開拓使の番人か」
うしろにいる男は何とも答えなかった。
「北海道から、堀という男が見えとるはずじゃ、ご存じか」
羅卒はそれにも明瞭りしたことが云えず、手をあげて闖入者を案内しているのであった。
「そちら、そちらです」
「まずその男に会いたいと思うておる、それから黒田どのじゃ」
阿賀妻はそう云って、示されたかどを曲った。聞こうが聞くまいが、通りぬけてしまえば、あとはどうでもよかった。
官員らしいものが二人、大ごえに喋りながら近づいて来た。ひどい九州なまりで、談じていることの内容は判らなかった。しかし彼らは昂奮していた。その人も無げな騒々しいひびきのなかで、一つの固有名詞が阿賀妻の足をがくんと停めた。
「マルヤマサクラ、丸山作楽」