轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
はッとしたように官員らも立ちどまった。駭きの眼を見はって阿賀妻を見あげ見下した。口はしっかり結んでいた。両者のあいだには二三間の距離があった。その空間を、まるで動きの取れぬ棒か何かで隔てられたように、睨みあって一まわりして行きちがいになった。
阿賀妻は肩を揺ぶった。彼は身体のすみずみまで赤い血が満ちて行き、勇気とでも云うべきものが隙間なくみなぎるような気がした。
そして、古ぼけた建物のなかにのっそりはいった。庫裡の内部を造りかえた間に合せの役所であった。日向に馴れていた彼の眼に、その瞬間あたりはまッ暗であった。書類や筆墨や朱肉やなどの――あの役所にだけある特別な臭気が、つンと鼻をついた。取りすました役人らの横顔がぽッと見えた。
阿賀妻は入口につっ立って強くまばたきをした。いそいで視力を馴れさせようとした。すると耳もとで、そこの黒い壁の物かげから、どたどたと踏みだして来たものがあった。
「おい、おい」
「誰かア――」
答えるまえに阿賀妻は片っ方の足をうしろにひいた。そちらに向き直って、四五人の守衛の前に挑むような構えになっていた。
「受付けはどこか?」