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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
そこで充分に暴れて根拠地ハコダテに引きあげて行った。
黒い船はぶ気味なのだ。もともとそういう大きな船と交渉を持つほどの港ではなかった。いわし、いかの沿海漁から、時々まぐろ、ぶりを沖に追いかけていればこと足りた。いかにも風雨にさらされたと見える小さな家は、屋根に石を並べてひっそり砂地に置かれていた。そこへあらわれたこの黒い船。これもやはり災いであった。
一日二日の接待では済まなかった。
闖入者はその翌日から腰をすえたのである。あるいは据えないわけに行かなかった。五軒の家を、そこに棲んでいたものを追い立てた武士の一団は、頭立ったものを中心にして、五つの班に別れた。朝々彼らは邦夷の前に伺候した。彼はうろこ臭い漁夫の家の窓をあけて、明けて行く海を見ていた。彼らの船はともをおとしてそこで波に洗われていた。海のなかで腰を抜かしているのだ。
朝陽は海の涯から揺れあがって来た。彼の顔は、見るからに朱く染めだされた。彼は朝の挨拶にこたえてそのま近に来たものに、誰ということなしに命じた。
「士官らの宿所にまいって尋ねてくれぬか、今日の修理はどの程度はかどりましょうか、と」