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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
「ああ、もし」と誰かが手をあげた、「失礼ながら、そこのところをもちっと、ご悠りとお聞かせ下さらぬか」
読み手は唇を湿した。
「――左記の通りにござソロ、柳川源達どの、同じく春勝どの、岩橋貞助どの、岩崎栄太郎どの、同じく久治どの、――よろしいか?」
聞き手は深くうなずくのだ。
読みあげられて行く姓名の面体は、あるものは話しかけるかと思うほど明瞭に、他のものは朧ろに、目をあげて隣りに立ったものの顔を見直したものは記憶から消えていたが、しかし、何か目まぐるしく眼前にちらつくのであった。墳墓の土地の風景と、濶歩した城廓の姿と――そして、それらの人に混って、自分もまたそこに逍遙していた。大小を腰に挾み、麻がみしもに威儀をただして大広間に進んでいた。
「――以上の四十四名にこれありソロ」と、読み手は言葉をきって一呼吸入れた。
彼らは顔を見合わせた。それだけしか居なかった。幻想の大広間はがらんとした。正面の主君邦夷がつと立ちあがった。何か云った。家宰阿賀妻の下知があった。彼らはさッと一つところに塊っていた。われらが殿を衛るのだ――と叫んでいた。固めるように身を寄せあった。