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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
風の吹きあれたあとでは、岸べには、去年の枯れ草が剥き出しになった。遠く見はるかすと、漠として、しかもなかなか明瞭に、うす黒い線になってつづいていた。しょうの強いヨモギやアカザや、水辺のヨシ、アシなぞは、葉も茎もす枯れはててなお斃れないのであった。雪のうえに頭をだし、風に吹かれてかさかさと喚いている。
うねった川筋を横に渡ってしまうと、あちらには官の通路もある。吹雪のあとでは人夫を入れて路を開いていた。
松岡らは、そのまぶしい雪の原野に消えて行った。
「一先ず当所を引きあげずばなるまい」
それがこの手紙の結論なのだ。相田清祐は書状を巻きおさめてそう云った。
「やがて春――」と彼は空を仰いで見まわすのだ、「家中の新しい顔を迎えて季節の準備も致さねばなりますまい、阿賀妻どのも左様申越されております、加うるに男子出生――」
「ご祐筆――」と、彼らの一人がふりかえった。
そこに菰をかけられた鋸屋がいた。
「ふびんな男、すて置くわけにもまいるまいのう、所詮手をつけたもの、宿縁によって、いかがでござろう、運び入れて遣わしては?――」
異議はなかった。たといその半面に彼の商売根性から来る打算があったにしても、托された使命をその手で果そうとした心根は彼らの胸にひびくのだ。