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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

「どうでしょう?――」と彼らは主人に挨拶をする、「そうだなア、何でもこの奥の原野に、ご時勢で、さむらい衆が入りこんでいるらしい、役所に行って聞いてみな」彼がそう教えたのだ。宿のあるじは、彼がそこに滞在する間は、心持ちは親がわりであった。商いは水ものであった。儲けが無ければ翌年まで宿料を貸した。

役人は、なお人夫を二人駆りだしてやって来た。

「どこにいやす?――ほとけは?」

相田清祐はじろりと見おろした。焔に照しだされた鬼面のような小男が、礼もなくさわぎ立てていたからだ。

門田与太郎が提灯を取って「こちら――」と導いた。

行商人は道具置きの小屋に長くなっていた。

門田は提灯をたかくさしあげた。

菰の上に固くなってまた菰をかぶっていた。役人は腰をかがめてそれをめくった。人夫の持っている弓張提灯を取って一わたり顔から足まで眺めた。

宿屋の主人は尻持ちをついた。

「だんなッ!」彼はそう叫んで役人の袖を荒々しくひっぱった、「や、やめて下さい、つ、つ、連れて帰りやす」

役人は軽くその手をはらった。

「ええッ! 見世ものじゃねえ――」

昂奮した男はぱッと菰をかぶせるのだ。