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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

決定した意志の力を倍加させねばならぬのである。

大野順平は安倍誠之助の家族が、その邪まものとして気になっていた。

「云うまでもないことながら――」と彼はあらぬ方を見て云った、「女は男に従わねばならぬ、聞けば二三日のち、開拓使ご用船がクシュンコタンに向けて出帆する由、そなたに取っても幸便と思われる、それについて、はなはだ差出がましくは存じたが、便乗の手つづき取っておきましたが――」

「はい」

幾らかひきつった険のある眼で、痩せた女は大野を見つめた。

「むろんオダルまではお送り申すことになっています、あそこには官の指定宿舎もござる、ふつつかながら、身どもら、お乗組までお世話させていただく所存」

「はいーッ」と歯を喰いしばって、女は袂で顔を蔽った。

「ご不満でござるか」

大野はあかるい陽のさしている戸口を見ていた。

彼は、床とは名ばかりの上りぱなに腰をかけて、屋内の煙くさい空気を深く吸いこんだ。

女は炉ばたに坐っていた。そう云えば、木の股をそのまま利用した自在鍵もすすけて来た。炉の灰も白く積っていた。おいおいと草の小屋にも住み馴れていたのだ。それはこの家族だけではない。