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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
岸をうつ波のうねりは、河口一円にわたりて大きな弧をつくり、何故か敬遠して途中でびちゃびちゃと消えてしまった。
河水は洋々と間断なく海の中におしこみ、捻じこんでいた。
その南の岸辺に柳の木が成育し、従って土がかたまり、人々の足だまりが出来た。家々が低く点在してイシカリの港町をつくっていた。
北から海岸づたいにやって来た阿賀妻は、古びた家々の間で、本町通りのあちらの岸へ渡船を待たねばならなかった。
川風は水気をふくんでたたきつける。
そこから見あげる位置にある恵庭の嶺にはまだ雪のひだが畳まれていた。六月だというのに、はるばる吹きおろして来る風は野の草や木をちりちりと慄ませていた。重畳としたそれらの山のふもとにあたって、川は、のっそりと、最後のうねりを押しのばしていた。相も変らず黄いろい泥をふくんで、見るからに粘ばつくような水が、表面だけ、吹きつける風に申しわけのような波を立て、底知れぬ重みをもって動いていた。その口にあるのが即ちこのイシカリの街。
西蝦夷日誌の著者をして、「サッポロに府を置き給はゞ、不日にして大阪の繁昌を得べく」と云わせた予測が実現されかけていた。