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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

空はひろく、伐木のあいだに、開墾の小屋はま新しく点在して見える。つかず離れずにしていたイシカリ川にそこで別れ、古い堀に導かれるのである。乾いた粘土はかたく緊った路をつくっていた。その先の森の中がサッポロであった。樹木をおしわけて町がつくられつつあるのだ。限りもなく青い空をうつして、澄んだ水がそこの排水溝をしずかに流れていた。トン魚がついと隠れ、タニシがもぞもぞと蓋をしめ、そこまで来ると、もはや、聞える物音は幻覚ではない。感触出来るものであった。

府と定めた土地がこれである。上からは、折柄おしよせるオロシャの勢力があり、下からは、植え移さなければならぬ過剰人口があった。アイヌの遊牧にまかせていたこの島は、外寇と植民の足だまりになるよう立てなおさなければならない。そういう地の利がこの場所であるというのだ。東蝦夷の地に向ってはトカチ、ネムロに到る一線をひき、西はカミカワの盆地からイシカリの平原を縦に貫ぬき、二つの線の交わる肝心かなめの一点を探して、そこにサッポロの地が発見された。漁猟を追う先住の土民にあっては、ただ単に、乾いたひろい場所でしかなかったこの地点も、「路相ひらき、中土より充実仕り候うへ、四方へ出張候形勢に相成り、東西南北とも自在に救応出来、左右前後控制仕り候ほどの形勢」