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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
に占領しました、いつ当地に寇するやも知れません、しかも、われら青二才が申すまでもなく、兵の強さは兵站部の強さにある、その農を――ご承知でしょうか――長官は範を求めてアメリカにまいりました、文明開化のお傭い教師を連れて来ました、間もなく技術者がこちらに参るでしょう、阿賀妻さん――計画は実行を伴わなければ、そして、こういう実行は、二年や三年では芽は出ない」
堀はそれだけのことを、何かねちねちとこちらの胸に塗りたくるようにして云った。それが云いたいばっかりに彼は馬を饗応し、イシカリまでの同行を思い立ったのかも知れない。官の威を示す言葉とも見えれば、協力をもとめる切なる望みとも聞える。サッポロを離れた当分の間は、数えあげる移民の家もそれらしくちらほら見えたのであるが、シノロ、バンナグロとなればひろい原野の見判けもつかない。取りあえずこれらの土地が下附されているという。捨て売りするほどの俸禄を食む官吏と、それの直接の庇護のもとにある移民であった。イシカリ川の片側を官用通路に沿うて、纔かに拓けかけているほそぼそとした姿であった。そして、それだけである。対岸一帯の原野には一指も触れていない。