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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

月賦で、ええ。あるとき払いでも、ええ。玉井さんを信用して、売ります。持って帰って下さい」

その親切な計らいで、手に入れることが出来たのであった。

金五郎は、時計を柱にかけた。

「マン、飯は、まだか?」

「出来ました。もう、ええです」

「そうか」

金五郎は、二階の梯子段のところに行って、下から、呶鳴った。

「おうい、みんな、晩飯ぞう」

「はあい」

二階にいた子分連中が、どやどやと、降りて来た。

いつもと変らぬ食事をした。

夜が来て、八時、九時、十時と、時間が経った。町の家々も、一軒ずつ、灯を消す。静かになった夜の空気を、病院から、聞えて来る重病人の陰鬱な呻き声だけが、かすかに、破る。

十一時が打ったとき、金五郎は、マンに、

「大盥を、玄関において、一杯、水を汲みこんでくれ」

と、命じた。

マンは、いわれるとおりにした。なにをするのか、わからなかったけれども、無言で、いつも洗濯に使う盥を、金五郎から指示された場所に置いた。その盤に、バケツで五六杯、水を八分目ほど満たした。

「マン」

「はい」

「お前、出しゃばることならんぞ。女だてらに、喧嘩の中などに、入るなよ」

「はい」