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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
花田の声援が出ると、友田は、それ以上は、止めろとはいわず、いよいよ苦りきった不愉快そうな様子で、かたわらの染奴に、しきりと、酌をさせて、がぶ飲みした。
「……思えば思えば、この園が、去年の秋のわずらいに、いっそ死んでしもうたら、こうした難儀もあるまいもの」
そこで、金五郎が、ひとしきり泣いて、打ちどめにすると、どっと、拍手と笑い声とが起った。胡蝶屋豆八が、拍子木を打って、幕がしまる。
染奴が、友田へ盃をさしながら、妖しい微笑を浮ふべて、
「旦那、あなた、玉井さんとお京さんとのこと、御存知ですの?」
「どんなことをじゃ?」
「二人が、ええ仲ってこと」
「そんなことが、あるもんかい」
「お京姉さんに、だいぶ、御執心のようでしたけど、さあ、……ねえ……?」
友田喜造は、いくつかの傷痕の浮かび出た、どす黒いくすんだ顔に、鳶のような鋭い瞳をぎらつかせていたが、肩衣を脱いで、また、座敷にかえって来た金五郎を見ると、待っていたように、右手をあげて、呼んだ。
「おうい、玉井君、ここに、おいで。ちょっと話がある」
金五郎が前に来ると、友田は、無理に笑顔を作って、盃をさした。金五郎は、おとなしく、これを受けて、