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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
そして、今、暴力を過信する者たちの、芝居気たっぷりな脅迫を受けて、彼等を軽蔑する念はいよいよ増した。同時に、
(ふン、ほんとに斬る気はない癖に、……)
相手をなめる気持さえ湧いた。
ところが、どうしたことか、不意に、金五郎は、全身が冷却するような戦慄に襲われたのである。眼を開いた。あまりに、しいんと、あたりが静かなことが、不気味になったのであった。
金五郎は、ぎょっとした。むっくりと起きなおった。二十人もが刀を抜きつれていることは、前とすこしも変りはないけれども、眼を閉じる前にはなかったすさまじい殺気が、刀の衾の間に生じている。ことに、隊長の男の眼は妖しく光り、その刀は今にも金五郎を突き刺すかと思われた。金五郎は、息をひそめた。言葉が出なかった。生唾を呑みこもうとして、眼を白黒させた。恐怖の感情がにわかに湧いたのである。
(本気で、おれを殺す気になっとる)
はっきりと、それがわかった。けれども、その急激な変化の理由はわからなかった。金五郎は、急に危険を感じて、防衛の姿勢になった。
金五郎を凄い眼つきで睨んでいた隊長は、はがゆそうに、舌打ちすると、パチッと、はげしい音を立てて、日本刀を鞘におさめた。