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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
ようもまあ、似たもんじゃ。お京の若いときと、ひとつもちがわん。
病気のお京は、おれに、いうた。
――金五郎さん、今ごろになって、あたしは、こんななりで、あなたに逢いとうはない。でも、やっぱり、死ぬ前に、一ぺん逢えてうれしい。
そして、泣いた。
おれは、眼をこすってみた。これが、あの、昔のお京じゃろか? まるきり、しなびた胡瓜のごとなって、痩せんこん骨、ふた眼とは見られん。じゃが、お京にはちがいなかった。
それで、おれも、いうた。
――お京さん、わたしも、あんたに逢えてうれしい。
そしたら、お京が、いうた。
――金五郎さん、彫青をもう一ぺん見せて。
おれは、左腕を出した。
――美しいわ。二十五年前に彫ったときと、ちっとも変ってない。あたしは、これを彫ってから、二度と彫青を彫らなかった。でも、あたしはおマンさんに負けた。この龍のつかんでる菊の花、おマンさんなのね。
お京は、そんなこというてから、傍に居ったお葉に、筆と針とを持っておいで、といいつけた。
おりゃあ、死ぬ間際に、お京が、約束の右腕に、降り龍でも彫るのかと、びっくりした。ひやひやしとった。
そしたら、違うとった。