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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
今や東方への衝動がこの実証の試みとなって現われて来た。しかもそれは、トスカネリの説明が示す如く、明かに間違った認識に基いてであった。西廻りの道が「近道」であるのでなくてはコロンブスの勇気は出なかったであろう。とすれば新大陸の発見は間違った認識によって誘導されたと云わなくてはならぬ。それはこの発見が偶然に過ぎなかったということなのである。しかしこの偶然を押し出したのが東方への衝動であったとすれば、前に云った如く、この西廻り航海が航海者ヘンリの事業から派生した一つの枝に過ぎぬということは、いよいよ確かであろう。
コロンブスの功績は以上の如き西廻り航海の試みを実行に移したという点にある。ここには航海者ヘンリの如き明敏な組織者はいなかった。勢い彼はその個人的な熱情と意志とによって押して行かなくてはならなかった。ここに彼の長所も欠点もある。彼が多分に山師的な色彩を帯びて見えるのもここに起因するであろう。
コロンブスは一四八三年に右の計画をポルトガル政府に申出た。ヘンリ王子の精神を受けついだジョアン二世が勢込んで黄金海岸から先へ歩度をのばそうとしている時であった。