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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

第十一章 キリシタン運動の最高潮

一 信長の鉄砲隊と艦隊

一 信長の鉄砲隊と艦隊

信長がキリシタンの宣教師たちを庇護したのは、新しい宗教を求めたが故ではなくして、ヨーロッパの文明を求めたが故であった。その態度は、最初にフロイスに逢って以来一貫している。彼はフロイスにおいてヨーロッパ文明の尖端に接触すると共に、この人物の担っている象徴的な意義に非常に引かれたのである。従って彼はこの人物を好み、それを理解しようと努め、その事業を保護した。その態度を彼自身は、外国人であるが故に庇護する、という風に云い現わしている。彼は仏僧の堕落を事毎に罵っていたし、またその後思い切った仏教弾圧を始めたのであるから、それと対照して彼がキリシタンの宣教師の真面目な態度を賞讃したり、また彼らを特別に優遇したりしたことは、ともすれば彼の信仰の要求と結びつけて解釈されることもあったようであるが、しかし彼は信仰などを求めていたのではない。仏僧の堕落や宣教師の真面目な活動は、当時にあっては明白な客観的事実であって、それを認めたことは、何ら主観的要求の証拠とはならない。信長は宣教師と会談する毎に、世界についての新しい知識を得ようとはしていたが、救いを求めるような態度を示したことはない。