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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
五 鎖国
一六二六年は、家光の政策が長崎へ響いて来た年である。ヤソ会の宣教師九人の火刑を初めとして、有馬における残忍を極めた拷問苛責が開始された。温泉岳の火口がそのために用いられた。熱湯に浸して苦しめるのである。が殉教者たちは、その苦しみを見せつけられても、退転しようとはしなかった。最も猛烈であったのは二年位であるが、しかしこの残忍な方法は一六三一年までは続けられたのである。それは思想や信仰の力に対する、武力のヒステリーだといってよい。
一六二九年頃から東北の方でまた迫害が烈しくなっているが、長崎の方でも一六三三年には、多数の宣教師や信者が「穴つるし」にされた。連年の多量な火あぶりがまだ手ぬるく感ぜられて来たのであろう。
五 鎖国
宣教師追放令を出した秀吉も、禁教令を発布した家康も、鎖国を考えていたわけではなかった。秀吉の追放令には貿易の自由をわざわざ掲げているし、家康は禁教令に先立ってオランダ貿易を始めている。しかし十六世紀末十七世紀初頭のヨーロッパの文明を摂取したいと考えつつ、そこからキリスト教だけを捨てて取らないというようなことは、到底出来るわけのものではない。