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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
インカがスペイン人らを掌中におびき寄せたのだということは必ずしもあり得ぬことではない。この罠をぬける唯一の道は、罠を逆用することである。これは一刻も早い方がよい。南方からインカの軍隊が集まってくれば事は一層面倒である。従ってインカが承諾した招待の席こそ最上の機会でなくてはならない。奇襲によってインカを掌中に握れば、あとは全帝国に命令することが出来る。以上がピサロの考であった。幹部は皆これに賛成し翌日実行に移すことにきまった。
一五三二年十一月十六日の夜明、部下の軍隊が武装を整えると共に、ピサロは奇襲の企図を簡単に発表してそれぞれの部署を定めた。彼らの宿営した低い建物は三方から広場を包み、その広場の一端に田舎を向いて要塞が立っていたのであるが、ピサロは騎兵を二隊に分けて二つの建物にひそませ、歩兵をもう一つの建物に隠して置くことにした。要塞には二門の小さい鷹砲を据えた。インカを迎える時ピサロの手許にいる兵士はただ二十名だけとした。機会が来れば鷹砲を合図に三方から突撃してインカを捕えようというのである。かく部署を定めてから厳粛なミサが行われた。彼らにとっては、いよいよ十字架のための戦が始まるのである。