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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

ピサロの準備がかく早朝から整っていたのに対して、インカの方はゆっくりしていた。インカの行列が軍隊を率いて動き出したのはやっと午頃であった。予めピサロへ使を寄越して、昨日のスペイン人と同じくこちらも武装した兵士を連れて行くが好いかと念を押した上でのことである。インカは輿に乗って街道を来たが、軍隊の大部分は街道沿い、野原を覆うて押し寄せて来た。ところで王の行列は町から半哩ほどの所で停止し、テントを張りにかかった。今夜はここに宿営して明朝町に入るというのである。この報道はピサロを困惑させた。早朝から緊張して待ちかまえているスペイン人たちにとっては、ここで永びかせられるほど危険なことはない。彼はアタワルパに対して、予定の変更の不可を説き、歓迎の準備は悉く整っている、今夜は食事を共にするつもりであったと云わせた。これを聞いてインカはまた気を変えて進行を続けた。しかもピサロに通知していうには、カハマルカで夜を過す方がよいと思うから、自分は兵士の大部分をあとに残し、ごく少数のものをつれて武器なしで町に入るであろう。――ピサロは神の助けだと思った。インカは罠の中へ飛び込んでくるのである。