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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
更にまた皇帝カール五世の朝貢者となることを承認せよ。その場合には皇帝は彼を臣下として援助し保護するであろう。
この説明の意義がインカに理解せられたかどうかは疑わしいが、しかしそれがインカに降服を迫るものであることだけは十分に理解せられた。インカは眼を瞋らせ眉を顰めて答えた。「余は何人の朝貢者ともなろうとは思わぬ。余は地上のいかなる君主よりも偉大である。汝の皇帝は偉大な君主であるかも知れぬ。その臣下をかくまで遠く海を超えて送って来たのを見ると、確かにそうであろう。余は喜んで彼を兄弟と看做すであろう。が汝のいう教皇は、おのれのものでない国土を他に与えるなどと云うところから見ると、気違いに相違ない。余の信仰は、変えようとは思わぬ。汝のいう所によると、汝らの神はおのが作った人間によって死刑に処せられた。しかし余の神は、見よ、今なお天に生きてその子らを見おろしているではないか。」そう云ってインカは丁度その時西の山に沈みつつあった太陽を指した。そうしてバルベルデに、何を典拠としてあの様なことを説くかと聞いた。修道僧は手中の聖書を指した。アタワルパはそれを取ってペーヂをめくって見たが、恐らく侮辱を受けた感じが突然湧き上ったのであろう、乱暴にそれを投げつけて云った、「汝の仲間に云え、彼らは余の国中に於てなしたことの詳細