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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

このオルガンチノはフロイスの到達した決意と方針とをそのまま受け入れた人で、信長時代のキリスト教の隆盛と深く関係しているのである。

フロイスの功績は、新しい信者を数多く獲得するということではなかった。信者の数はむしろ死亡によって減少して行った。彼の努力はむしろ信仰を深め、その退転を防ぐことであった。殊にこの戦乱の期節においてはそうであった。長期に亘って布植せられた仏教の勢力は中々抜き難く、また京都には諸宗派の精鋭が集まっているのであるから、京都で一人の日本人を改宗せしめることは他の国々で二百人を改宗せしめるよりも難しいことであった。しかしフロイスは、その中で教会を維持しつづけ、親族の強硬な反対にもかかわらず信仰を貫き通した少年コスモや、清浄の理想を追うて結婚することなく死んで行った愛らしい少女パウラのような、感嘆すべき信者をも出したのである。がそれよりも著しいフロイスの功績は、京都における教会の存在の権利のために戦いつづけ、和田惟政や織田信長の意志を捉えることによって、政治的に、或は公共的に教会の地位を確立したことであった。

この仕事のために異教徒和田惟政がフロイスを助けた態度には、実際驚くべき一貫性や強靱さがあった。