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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

帰り際に、丁度坂東から届いた鴨十羽を彼に贈った。この厚遇の噂はすぐに全市にひろまり、キリシタンたちは皆祝辞をのべにやって来た。

信長の計画した祝祭はその三日後、四月一日(天正九年二月二十八日)に行われた。それは部下の諸将を集めてその威容を展観させる馬揃えであった。諸将は、部下の衣裳や馬匹の装飾に工夫を凝らし、巨額の金をつかった。緋の服を着、馬も緋で覆うとか、五十人の家来に金襴の揃いの服を着せるとかいう類である。高山右近でさえも、己れと馬とのために七通りの服装を作った。祝祭の場所は東の野で、砂を撒いた競技場のまわりに多数の桟敷が造ってある。競技に参加した武士たちは、十三万と云われた。諸将はおのおの揃いの服の家臣たちをつれて定めの位置につく。信長は、多数の良馬を右側に曳かせ、うしろにワリニャーニの贈った天鵞絨の椅子を四人の武士に担わせ、その後方に歩兵を随えて臨場した。

祝祭として行われるのは、騎馬の武士たちが、或は三人ずつ、或は十二人ずつ、或は四五百人も一時に、競技しながら、場内の一端から他端へ走るだけのことであった。しかしその武士たちが多年来近畿地方の戦争の舞台に立っている役者である、ということは、市民の関心をそそらずにはいなかった。