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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

はもう少し円満に行ったかも知れない。しかるにクエリヨは、この回航が危険で実行し難いことを説明しつつ、極めて消極的な態度でこの申入れを船長に取りついだだけであった。船長も小さい船で平戸からやって来て、秀吉に大帆船の回航がいかに危険であるかを説明した。秀吉はこの弁解を納得したかのように、船長一行を款待して船に帰らせた。それが七月二十四日のことであった。

その夜、突然、秀吉は心を変えてキリスト教迫害を始めた、とフロイスは報告している。秀吉自身はずっと前から考えていたと主張しているが、それはこのような大事を軽々しく気分一つできめたと思われないためであって、実際は突然の怒りによるのである。かく解釈してフロイスは、元比叡山の坊主であった徳運の高山右近に対する憎悪や、有馬領で秀吉のために美女を求めてキリシタン女子のために恥をかいた話などを挙げている。しかしヨーロッパ風の大帆船のことは一年来の懸案である。それに対するクエリヨの解決がいかにも拙かったことは認めなくてはならない。だから秀吉の、ずっと前から考えていたという主張は、或る意味では正しいであろう。それが船長に会った日の夜起ったということも、いかにももっともである。