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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
一四九七年初夏、出発に際して、司令官はプレスター・ジョン、インドのカリカットの王、その他の諸君主宛のポルトガル王の推薦状を貰った。この航海がポルトガル国の行動であるということは、形式の上にもはっきりと示されて来た。
緑の岬あたりまでディアスが同伴し、そこで分れてガマは喜望峰に直航した。海は相当に荒れた。一カ月航海の後、陸に近寄り、喜望峰に達しようとしたが駄目であった。実際この後になお数カ月を要しているのである。また大洋に出て南へ下って行く。乗員はもう帰航を思うようになる。ガマはそれと労苦を共にして夜もろくろく眠らない。やがて南の冬になって日が短くなる。一日中がほとんど夜である。乗員は恐怖と労苦とに病み疲れて食事の用意さえ出来なくなる。不平がひろまり帰航の意が高まる。しかしガマは烈しくそれを斥けた。乗員が寒さに慄えても頑として引き返さなかった。
この司令官の確信、決意、統率力がこの劃期的な企ての核心である。が未知の世界への突進、ただ科学的な認識の力にのみ頼る大洋航海、その中で揺がぬ確信と決意とを持ち続けることは、ただ科学的な推理力のみのなし得ることである。