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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
オランダのバタビヤ総督は翌一六二九年に特派使節を寄越して事件の解決に努力したが、幕府は台湾におけるオランダの根拠地ゼーランヂヤ城の引き渡し或は破壊を要求し、それを拒絶すればオランダ貿易を禁止するような気勢を見せた。オランダ人は勿論この要求には応じなかったが、しかし、日本貿易を失うことをも怖れ、遂に浜田弥兵衛と事を起した前台湾長官ノイツを犠牲にすることにして、一六三二年にノイツを日本に連れて来て日本側に引き渡した。その頃には弥兵衛の船の船主であった初代末次平蔵も既に死んでいたし、鎖国の形勢が急激に熟しつつあったために、幕府は事件責任者の引き渡しを以て満足し、船の抑留や商館の閉鎖を解いてオランダ貿易を旧に復したのである。
その後オランダ人はいろいろと幕府の御機嫌を取ったので、ノイツは一六三六年に釈放された。また翌一六三七年には、オランダ人側から、日本とオランダとが同盟してポルトガルの根拠地マカオ、スペインの根拠地マニラ及び基隆を攻略しようという案を持ち出した。やがて長崎代官の二代目末次平蔵は、商館長コークバッカーに宛てて、幕府はキリスト教宣教師の根拠地フィリッピンを征服するに決した、ついては軍隊の渡航や上陸を掩護し、スペイン艦隊を撃退する、という任務に必要なオランダ艦隊を派遣して貰いたい、と申込んで来たという