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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页
畏怖も嫌忌も恐らくは我々以上であって、従って必要のない時にはたいてい繁み隠れなどから注意深く平地人の行動を、窺っていたのであろうと想像する。
菅江真澄の『遊覧記』三十二巻の下、北秋田郡の黒滝の山中で路に迷った条に、「やゝ山頂とおぼしき処に、横たはる路のかたばかり見えたるに、こは路ありあな嬉しと言へば、案内の者笑ひて、いづこの嶺にも山鬼の路とて、嶺の通路はありけるもの也。此道を行かば又何処とも無く踏迷ひなんとて、尚峯に登る云々」とあった。故伊能嘉矩氏の言には、陸中遠野地方でも山の頂の草原の間に、路らしいものの痕迹あるところは、山男の往来に当っていると称して、露宿の人がこれを避けるのが普通だったとの話である。阪本天山翁、宝暦六年の『木曾駒ヶ岳後一覧記』に、前岳の五六分目、はい松の中に一夜を明す。ここに止宿のことは村役人・人足までも不承知にて、かれこれと申すにつきその趣旨を尋ねて見ると、すべてかようの山尾根先は天狗の通路であって、樵夫の輩一切夜分は居らぬことにしていると述べた。しからば村方の者どもは、山の平に廻って止宿せよと申聞け、自分だけ其場に止宿したと記している。