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やまのじんせい

山の人生

柳田 国男

山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页

青空文庫

永遠に隠されてしまって親兄弟を歎かしめることもある。およそ尋常邑里の生存において予知すべからざる危難は、ことごとく自ら責め深く慎むべき理由としてこれを認めたのが山民の信仰であった。

それ以外にも予告警戒のごときものはいくらもあった。天狗の礫と称して人のおらぬ方面からぱらぱらと大小の石の飛んできて、夜は山小屋の屋根や壁を打つことがあった。こんな場合には山人が我々の来住を好まぬものと解して、早速に引きあげてくるものが多かった。こればかりは猿さえもするから、或いは山人の真の意趣に出たものと考えてもよいが、それがいつでも合図に近くして、かつてこれによって傷いたという者を知らず、石打の奇怪事は都邑の中にも往々にして起こり、別に或る種の隠れた原因があるらしいから、まだなんとも断定はできない。それから足音や笑い声の類は、偶然にこれを聴いた者がおじ恐れたというだけで、もとよりそのような計画のあったことを、立証することは容易でない。ことに最も有名なる天狗倒しの音響に至っては、果して作者が彼らであったかということさえ、なお疑わなければならぬのであった。或いは狸の悪戯などという地方もあるが、本来跡方もない耳の迷いだから、誰の所業と尋ねてみようもない。