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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页
誰かが行き合わせて大声を出し、または背中を一つ打ったら正気がついたという風で、若い衆やよい年輩の親爺までが、夜どおし近所の人々に心配をかけ、朝になって見ると土手の陰や粟畠のまん中に、きょとんとして立っていたなどということも、またすでに昔話の部類に編入せられようとしているのである。
しかし寂しい在所の村はずれ、川端、森や古塚の近くなどには、今でも「良くない処だ」というところがおりおりあって、その中には悪い狐がいるという噂をするものも少なくはない。神隠しの被害は普通に人一代の記憶のうちに、三回か五回かは必ず聴くところで、前後の状況は常にほぼ一様であった。従って捜索隊の手配路順にも、ほぼ旧来のきまりがあり、事件の顛末も人の名だけが、時々新しくなるばかりで、各地各場合において、大した変化を見なかったようである。
しかも経験の乏しい少年少女に取っては、これほど気味の悪い話はなかった。私たちの村の小学校では、冬は子供が集まると、いつもこんな話ばかりをしていた。それでいて奇妙なことには、実際は狐につままれた者に、子供は至って少なく、子供の迷子は多くは神隠しの方であった。