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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页
子供のいなくなる不思議には、おおよそ定まった季節があった。自分たちの幽かな記憶では秋の末から冬のかかりにも、この話があったように思うが、或いは誤っているかも知れぬ。多くの地方では旧暦四月、蚕の上簇や麦苅入れの支度に、農夫が気を取られている時分が、一番あぶないように考えられていた。これを簡明に高麦のころと名づけているところもある。つまりは麦が成長して容易に小児の姿を隠し、また山の獣などの畦づたいに、里に近よるものも実際に多かったのである。高麦のころに隠れん坊をすると、狸に騙されると豊後の奥ではいうそうだ。全くこの遊戯は不安心な遊戯で、大きな建物などの中ですらも、稀にはジェネヴィエバのごとき悲惨事があった。まして郊野の間には物陰が多過ぎた。それがまたこの戯れの永く行われた面白味であったろうが、幼い人たちが模倣を始めたより更に以前を想像してみると、忍術などと起原の共通なる一種の信仰が潜んでいて、のち次第に面白い村の祭の式作法になったものかと思う。
東京のような繁華の町中でも、夜分だけは隠れんぼはせぬことにしている。夜かくれんぼをすると鬼に連れて行かれる。