轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
ところがその夜、家康が自身の宿所大宝院へ帰ってから、酒井左衛門尉、石川伯耆などの家老たちが、家中の人々が聞き知ったところを蒐めてのはなしによると、惟任日向守光秀の帰国については、そう軽々とは聞き流せない複雑性があるようにまた考え直されて来たのである。
まず、衆説を取りまとめた真相というのは、大体、次のような事柄が、光秀の急なる帰国の原因となったことは確かだった。
それは。――家康の着いた十五日のこと。信長は予告なしに饗応奉行の台所屋敷へ臨検した。このところ安土は照入梅のような蒸暑さであったせいか、乾物や生魚の臭いがぷんぷんと鼻へ襲った。のみならず堺や京から大量に集荷した食糧が、解きかけてあったり積んであったり、ひどく散らかっていた。内容がどんな珍味佳肴であろうと用捨なく蠅は群れたかってくる。信長の顔にも肩にもそれはたかる。
「くさい。くさい」
突然、門内へ姿を見せたときから彼の呟きは不機嫌を吐き出していた。つづいてずかずか調膳の大部屋へ入って来て、また一語を誰へともなくぶつけた。
「何事だ、この埃は。この不始末は。かような物ぐさい所で賓客の膳をしつらえるつもりか。