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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

お意あるなればいまのうちで」

「むむ。……惣左。そちもそう考えるか」

「思慮の乏しい日幡景親どのと共に惨敗を喫するよりは、むしろ……と」

「料紙と硯をかせ」

元祐は、筆をとって秀吉へ返簡を書いた。

内応のこと承知と。

「惣左。ではこれを」

「はッ」

「覚られるな。景親に」

「何のぬかりが」

惣左はふところへ入れた。

小西弥九郎が、一商人として、種々の薬品を納入に来たのは次の日だった。城内では、欠乏を告げていた品なので、彼の労を多とし平常に倍する値を払った。

代価は、惣左衛門の手から払われた。金子のうちに上原元祐の返書もつつみ込まれてあった。

「ありがとう存じます」

弥九郎は、公然、日幡城から出て行った。その足ですぐ彼が龍王山の陣地へ急いで行ったことは、不覚にも、日幡景親の手勢は気づかなかった。

滅亡に終るものは、たいがいな場合、外敵よりも内敵にその素因がある。内部に禍いの根のない限りは、外敵も乗ずることはできないからである。

日幡の城はすでに病を内に持っていたものだった。小西弥九郎を躍らせた秀吉の策は、単にその患部へ外から熱を加えたにすぎない。果然、内訌の疾患は遂に膿を出した。