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にっき

日記

宮本 百合子

15 一九二九年(昭和四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,482 字 · 160 页

青空文庫

九日

車を見つけてのせ、自分達 Madeleine の角まで歩いて Taxi にのりかえった。

夜、モヤへ手紙かき No. 31 私が巴里から打った電報が南米へ行ったとは驚いたものだ。

家で食事。

九日 水 雨

カーテンのすき間から日がさして居ると思ったのに

「雨ね、お姉様」

パンをたべ、Hotel へスエ子と行って一時までフランス語の勉強をした。一時にペレールで食事。兎を野菜と煮たのをくわされた。兎ははじめてだった。軽い、鳥のようだ。臭くもない。ただスエ子が

このひとの生れ年だから何だかいやなの。

と云ったので、自分もいやで、美味く不味しという工合ですました。

それから Hotel へかえってフランス語。四時すぎかえって来てスエ子と例の角の Caf※(アキュートアクセント付きE小文字) へコーヒーをのみ、例の店から届けてもらったもので野菜のスチューをこしらえなかなか満足した。

九時前に出かけ、黄金狂時代を見た。ひどくなってしまったフィルムだが、やっぱりよかった。鋭いこわい心理が時々淵をあける。あの餓えて、チャリーが鳥に見えるところ、家を廻っての追っかけっこのところ、又 new year's eve のあのジャガ薯おどりのところなど。