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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

即ちそこは、河水と海水の交る危険を避けてずっと入江になっていた。山の彼方の高原から、または野末も見えない原野から、一団となって流れて来る河水は、おしよせる潮のいきおいに波立ちさわいだ。ひろびろとした白い砂洲を両わきに見ていよいよ海にはいろうとする。そのとき、河は、水脈を受けて立ちすくむかと見えた。それは潮のたかいときは河口深くおしよせて来て海のような――しかし海ほど手ごたえのない浪をかき立てた。復讐するように、河はときどき増水し、また氾濫した。濁った流れは青い海水のなかに、扇のように末広がりに、内海一ぱいになるかと思われた。

船を着ける港の街は、それらの何れもから防がれた最も安全な位置を、おのずから、あるいは意識して築いたのであった。ここは少しも崩れない河岸であった。低質粘土の重い地層にかためられ、上には樹林の根が交叉していた。いずれはナラ、ドロ、イタヤモミジなどの類であったが、その生きの強い樹と生命をあらそうように、下には熊笹がびっちり生えていた。日蔭には野いちごの蔓が黄ばんだ花をつけていた。白帆を立てた和船が静かに帆をおろして横づけになった。