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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
一万五千石は文字通り一朝の夢であった。目ざめて見れば六十五石の俸禄になっていた。士籍を剥がれた家臣七百六十余名は、数千の家族とともに一挙に土民となされ、路傍に投げだされた。茫然自失している彼等の前に、疾風迅雷のように乗り込んで来たのは皮肉にも南部の藩士である。没収を宣言された彼らの土地や家屋には主は無い筈であった。そして転封された南部藩士の所有に帰していた。しかし、昨日までのあるじはいたのだ。それらのわが家に、今日は見も知らぬ他国のものを迎え入れ退身しなければならぬという。家族をかかえた彼らは、身を避ける場所を見つけるひまもなかった――闖入者たちの情にすがって、わがものであったが、わがものでなくなった馴染みの物置に、一夜の雨露をしのぐ境遇に墜ちた。身の振り方を考える遑もないうちに身の置き場をうしなっていた。悲憤や怨嗟をととのえる余地も置かせない処分であった。そこで思いはこの蝦夷地に走ったのだ。云わば新たに、死ぬべき場所を捜さねばならぬ場合に立ちいたっていた。――「頓首再拝つつしんで歎願奉り候」と書いたのだ。――
「区々の微功も相立てて少しくその罪もあひ償ひたく日夜焦慮苦心まかりあり候へども庸劣にして」