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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

むしろ全然異った方法で生きていた。動かない制度の下に画然と区分され、そうして何代となく重ねた。彼らは、それぞれ別の世界の奇異な人間に見えていた。街の人間と士族とは、種族もちがっていると云えるだろう。見ただけで肌寒いものを感じた。先年まではその虫をかみ殺したが、この四五年の変化は、噛んでもその虫は呼吸の根をとめなかった。

さすがの阿賀妻もそこまでは気が付かなかったのだ。彼らの生活には、口に出して云ったことは絶対であったが、頭の中でぼんやり考えていることは行為の動機として認めなかった。口と腹とを二分しないことが修養のめやすであった。ちょうどそれは、云うことと考えることとを別々にしなければ生きられなかった被支配者らとは、まさに全く反対の努力をしたのであった。つまり昨日までは彼らも支配者のうちであった。

ある朝、作事場の下、――船着き場の川上に浮べておいた筈の筏が見えなくなっていた。発見したのは、朝霧のなかをやって来た松岡らの一隊であった。元気な数人は、渡船を呼ぶのももどかしく、漁船に乗って漕ぎつけて来た。太い杭だけが河岸に立っていた。夜半になって、水の動きにつれ、そこの綱がとけたのかも知れない。