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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
知らせによって迎えに押しだした。怒りに駆られて探しはじめたのだ。
ひえびえとする呼号が、散らばった彼らの口から吐きだされ、右に左に伝わって行った。棟梁がうおーと答えた。萱の原ッぱが風にあおられたようにざわめいた。
松岡長吉は水際に身をひいて、うしろに川を置き、構えるようにした。捉えどころのない漠とした凄気を身に受けた。――そのとき、彼らは夜に乗じていた。いと口はこんなつまらぬ口論でよかった。蓄えたくわえたうっ憤を晴すためにおらびあっておしかけて来る――それであった。大工とトビの連中が一塊りになって松岡にとびかかった。
波の音とうちよせる潮のとどろきが消えたようであった。人声と跫音が入りみだれたようであった。しま萱のしげみがざわめき立ったと思った。そうして松岡は、ひどい静寂と喧騒を同時に感じたのである。だッと音たて棍棒が自分の足をさらうのをはっきり見たように思った。いやそれはうなる空気でそう感じたのだ。目は燃える火をはっきり見てとった。たかい岸の上に赤く焚かれて、それは彼らの出て来た建築場のあたりであった。棟あげした柱だけの家の下にちがいなかった。