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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
に於て、「不日大阪の如き繁栄をいたさん」と謳っていた。けれども船脚ふかい蒸汽船はとうていはいることが出来なかった。サッポロに府が置かれて、いわゆる大阪の繁栄はイシカリ港の西方十里のオダルに移っていた。ただしかし、この天与の海港は何分ともあのオロシャに近かった。彼方の兵力をもってしては一衣帯水の危険とも思われた。そういう為政者の躊躇にも拘らず物資の集散は日毎にはげしくなった。西蝦夷の生命をささえる咽喉にあたっていた。従って、大きく纏った取引きはこの地に来なければ埓があかないのだ。そこに慇懃を通じなければ糧米をととのえることが出来ないのであった。
十里の道は彼らの脚では一日の行程であった。白い砂のなかにぽっちり二粒の黒点のように浮いて、また沈んで、まもなく消えてしまうのである。
残ったもののおもむく部署はその反対の方角に聳えていた。あるいは埋もれていた。山であり野であり、とにかく涯しない原始林である。大部分のものはまだ見たこともない――しかし彼らのトウベツの地であった。昨夜この小屋の主人を待つあいだ、あの川ばたの建築場で、焚火を囲み、藪蚊をうち殺しながら相談した結論を、この一隊は実行しようとしているのだ。