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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
なだらかな眺望になるまで遠ざかっていた。
しかも、北辺警備の本心を蝦夷地開拓の言葉につつんでうろうろしていた開拓使庁は、漠然とこの地域の一帯をもとの伊達藩にひき渡したのである。境界はあるような無いようなものであった。むろん、人跡未踏のこの宏大な原野は、そのときの人の考えではどうにも仕末におえなかったのであろう。したがって、開墾しようとするものに与える土地はいくらでもあった。したがってまた、彼らのもとの藩主が、残して来たもとの家臣を呼びよせようと考えたのにも無理はなかった。何百年来培われた親子のような藩主と家臣の情誼が、そのとき親の立場にある邦夷の心持ちを、これほどまッ当なものは無いと自他ともに許したのである。遂に安息の道を見つけてやることが出来た。子たるもの、家臣たるもの――に、そのものたちの窘窮がここで今こそ打開される。
「どうだろう?――」と邦夷は側近のものをふりかえった。
「けっこうなことに存じます」
「主事――おぬしは?」と彼は名ざした。
主事というのは阿賀妻の役の名であった。先年怱忙のみぎりに、移住を日程にのぼした彼らが、さきの家老に一切をまかして、命じて開拓主事とした。