轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
刻々にうすれている。日没どきのうらぶれた静かさが水色の空気となって城下の街を包んでいた。そのなかを、何かあわただしく叫んで通るものがあった。それが旧主の忠実な従僕なのだ。彼の迫った気持は、おちついて明瞭りと、人々に判って貰えるような言葉となって出ていなかった。がアがアと鳴りわたって飛び散っていた。
大手の前で、彼は肩をつかんで引き戻された。はじめて存在がみとめられた。奥方に仕えている同じ若党の仲間が彼に気づいたのであった。
「おやア?」と顔をのぞき込まれた。
「お帰えりだ、間ぬけめが!」と、彼はいきり立った。相手は一足跳びのいた。しかしこちらは、先日からの腹立たしい思いの結論であった。
「わからないのか、お帰りだ、おい――お着きだよ、お殿さまの」
吃りながらそう云って、彼は両掌で、顔を蔽った。感きわまって子供のように泣きだした。おさえていたものを抑えきれなくなったのだ。もとの城内にはいるお松のご門の上には、夕陽がかすれつつあった。あおい松の葉がぽとりと降って来た。
もとの仲間はようやく事情をのみこんだ。彼は尻はし折ってばたばたと走りだした。引きかえすのであった。