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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
四
家中のものが考えていることが、おぼろげながら雰囲気として触れて来るのだ。
時代の流れが端的に彼らを洗っていた。あれよあれよと見送って、そのすさまじさに自失していた。腑ぬけのようにぼんやりしていた。ここまで来てその洞穴にも風が立ちさわいだ。あれほど蔑ろにされたことは忘れてしまった。朝令暮改の政策に追いまわされての何百日かであった。その時間は短かいとも云えるしまた相当に長いとも云える。しかしとにかく、去就にまよっていたものに方向があたえられたと云うべきだろう。
この通り生きていたのだ。何としてでも生きては行かれるのだ。――そのまま坐りこんで、この安穏で充分であると思うようになっていた。亡びるものにだけある、意志とも云われないひとつの意志! ふりかざすとこれもまた一種の理由になる。
あの日彼らが受けた打撃はそれほど深いものであった。ふい討ちであり苛烈であった。削封が申し渡されて、はッと頭をあげたとき彼らの身分は掌をひるがえすように失墜していた。無になっていた。そして、恐らくその日を岐れ目にして、徐々に、心に思うことが各々の胸で少しずつ異った方向に離れだしたのであろう。