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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
先年来の身をもってした経験が彼の肺腑に徹していた。従って彼は、彼の胸中を知っている家臣の処置を、自分の処置と考えていた。もしも、阿賀妻に対して不足があると云うならば、取りも直さず、それは自分に対する不満なのだ。しかも、今更、ああもしたかった、こうでありたかったと云って見たところで、事態がその様に改められるわけではない。
「これで一切のくくりがついた、やがて、花も咲けば実もむすばれよう」と彼は誰にともなく云った、「――春日煦々の船出じゃからのう」
家族を落ち着かせた家中のものは邦夷の周りに集っていた。
「まことに、めぐまれた日和でございました」と柳川源達が云った。
「予定も狂わず、この通り乗り込みもおわりましたし」と大沼喜三郎がそれに和すのだ。
「まず、幸さき良しと思わねばならぬ」
そう云った邦夷の言葉を、彼らは口々によろこんだ。
「左様々々」
主君と彼らの間がずいと接近したようであった。そして、これら――ここに集まったものだけは、同じその思いに捕われていた。おのずと邦夷は口数が多くなっていた。
「相田や大野ら、あちらのものは待ちこがれていることであろうぞ」
「それは」