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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

目もまた足を運ぶ努力に力を貸しているのだ。ときどき、背中にあたって頽れた風が、彼らの鼻ッつらに粉雪を捲きあげた。しかし、まだ太陽は空に見えていた。そして、空に陽の顔を感じている間は気持もあたたかであった。

そうして渓谷にはいって来たのである。

ながい間、ものを云わずに歩いた。山峡の雪は、目立ってやわらかく、しかも深かった。カンジキは往々持ちあげ兼ねるほど深く、その雪に埋まるのである。片方の足を持ちあげると、他の足は重心を移されてずるずると沈んだ。両手を添えて抜きだして、よいしょ、よいしょと力づけ次の足を前に出す。その苦労だけで心は一ぱいになった。何も思うことは無かった。何も云うことは無かった。衣類に包まれた全身はほてって来た。ぬらぬらした汗が頭から流れだし、こめかみに垂れた。

樹々は、先日来降りつんだ雪を枝も折れそうなほど担っていた。葉のない木も、細い梢の先まで雪を附けて撓っていた。樹氷に纏りつかれて重くなっているのだ。ときわ樹は枝葉の上に山のように積みあげて幹から外れそうであった。すでに、その重みにたえ兼ねて折れたものもあった。

そして、森のなかはざわめいているのだ。