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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

神経は小さく、かたく、やがて動きをとめるかも知れない。生命が消えかけるのである。

高倉は気づいて跳びあがった。ずしんと頭をうちつけて我にかえった。まびれ着いた雪をたたき落した。「おい!」と鋸屋を呼んだ。返事が無いのでその足を蹴あげた。「睡ると死ぬぞ」と彼はどなった。「死ぬ――」と云う言葉が彼の神経にひびいたらしかった。ふいに彼は立ちあがって歩きだした。何かぶつぶつ云っていた。「どこへ行く?」と高倉は呼ばった。その声は聞えなかったと見えて、鋸屋は吹雪の闇に一直線に進んでいた。どんどん歩いていた。「どうした? おい?」と、高倉は焦ら立って跳びだした。彼は、ふりかえりもせぬ鋸屋に憤ッと腹を立てていた。駈けつけて相手の襟がみをひッ掴んだ。

「無謀なことを致すな」

ぐいと引き戻した拍子に、しかしそれは、腐れた木株のようにぽこりと倒れた。

「おい、どうした?」

高倉は雪のうえに手をついて立ちあがった。そして、一言の返事もないこの同行者は何ものだろう――と、はじめて考え直した。がたッがたッと胴ぶるいが出た。

ごッと烈風が吹きつけた。よろよろッと雪のなかにへたばって、彼はちょっと目をつぶった。