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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

その年輩と風采は、小さな眼鏡を鼻にかけてしっくりその座に落ちついていた。彼の傍らの何番目かには、戸田老人が前こごみに坐っていた。彼は一服喫って、その吸口をとンと炉框にたたきつけた。それから身を反らして後を向いた。赤い焔の光りが流れて行った。そこには、蒲団にくるまれて高倉祐吉が寝ていた。意識は回復していた。

彼は助けられて、気が付くと同時にその書状のことを訴えたのである。あたかもそれだけがのっぴきならぬ用件のような気がした。けれどもそれは、何分とも死者の懐ろに挾まっていた。事情がわかって来るにつれて、行き斃れになった二人の立場は了解されたが、ただそれを、そういう事情であれば尚更、無断で取り出せない気がした。しかるべき筋――というのは、管轄役所の承認であった。どう仕末するにしろ、検死を受けねばならぬものであった。それには、イシカリの港までの往復が必要なのだ。

「拙者が一ッ走り行ってまいりましょう」と松岡長吉が云った。彼は、自分の手で建てた河畔の倉庫が見たかった。雪の日には夢にまではいって来る。昨日の吹雪には梁のきしみを聞いたような気がした。彼は、そういう渇く思いを医す機会を捉えた。