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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
無論彼はそんなことは考えなかった。ただ鬱々としていた。
言葉少ない大野順平は、高倉のそういう変化に気づいて危なかしいものを感じ取った。彼がこの青年を明瞭り記憶したのは昨秋の道普請のときであった。そのときの高倉は、あたりの大人なみになりたい一心であった。しかし今では異って見えた。身体はめきめきとかたまって大人に近づいて来たが、心は彼の周囲の大人なみとも見えなかった。大野はひそかに、どうぞわが家中のものと同じ心になって欲しいと眺めるのである。そして彼は、そのためには、明けて十五になった自分の長女のことまでそれと結びつけて考えていた。
彼はふりかえった。ずっと後れてくる高倉を手をあげて呼んだ。
「おーい」
陽が照って来た。
「川がおちるぞオ――」
高倉は立ちどまってこちらを見た。それから急にいそぎだした。
これは、氷に覆われた白いイシカリ川であった。氷は川幅一ぱいに隙間もなく張りつめていた。水も波も隠して了った。固まった雪の原野の一部分になっていた。岸から一段下った水面の低さと平かさとがそこを川と判断させるに過ぎない。川岸のある所は雪の吹き溜りになり、ある所は吹きめくられて土の色をにじませていた。