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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
軒を並べた人家があり、道は踏みかためられて当路の要衝となっている。西えぞに必要な人と貨物が先ずここに陸あげされるのであった。埠頭にもやった四五はいの船も足をたかく見せていた。荷をおろして一呼吸いれている姿であった。荷役の掛声も揺曳していた。そこから、或いは川瀬舟に積みかえられ、または駄馬の背によって彼らのサッポロに送り届けられるのであろう。撓む艪に押されおされた渡し舟は、ゆっくりと大きな半円を描いてずしんと南の岸にぶっつかった。その足場にとびあがった阿賀妻は、咄嗟に、官員の土地を感じた。誰一人として彼を見かえるものもなかった。それぞれの営みに熱中している木の香の新しい家が、市街地をひろげていた。深い軒のおくに、下手な勘亭流の文字を書きだした酒屋などが表通りに目立った。
ここからの陸路を左に取れば、おのずからサッポロに辿りつく。人馬の往来も目立つようであった。官用の路は踏みかためられていた。
しばらくは恵庭の山をま正面に見て歩いた。昨年歩いたこの路を、今は逆にとって急いでいるのであった。春を追いかけて陸前の地を旅立った彼らは、三月の下旬にはこの道を歩いていた。