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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

といった言葉を思いだした。この女工たちの中にも、「鬼」の毒牙にかかった者があるのだろうか? 役人は、百姓が泣き寝入りするものと定めていたのだ。マンの例外におどろいたかも知れない。しかし、「鬼」は、かえって非を悔いるどころか、意地になって、新しく、マンを狙いはじめたようであった。

それから、数日後、時次郎が、また、専売局からの書留郵便を、マンのところに、届けて来た。

「専売法違反ノ科料、金二円五十銭也ヲ収メヨ」という命令書であった。

駐在員の松富五八郎が、谷口家を訪れて来た。マンの方を、じろじろ横目で見ながら、

「善助さん、罰金が来たそうだねえ?」

「来ました」

「姐御の親孝行が、かえって、仇になったというところですかな。……だが、なあ、善助さん、この罰金、収めずにすます方法が、なくもないんだがねえ」

「いンね、ええです。収めます」

「そんな空威張りしたって、損だよ。政府だって、血も涙もあるんだから、恩恵に浴してはどうかね? 便法があるが。……科料は大したことはないけど、前科がつくし、第一、罰金を収めに、岡山裁判所までも行かねばならんよ」

「行きます」

「お上に楯ついて、得はないのになあ」