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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

山下剛一、長井久吉、市川弥兵衛、岡部亭蔵、花田準造、藤野清次、長富紋太、「ドテラ婆」の島村ギン、その他吉田一派の四天王、腹心、懐刀、猛将、といわれる人物が勢揃いしている。たしかに、これは壮観で、デモンストレーションとしては、重圧的といえた。

奇妙なのは、江崎満吉一党だ。もともと、江崎と玉井との仲直りという触れだしであるのに、この席では、江崎はまるで問題にされていない。昔は、吉田磯吉と対等の大喧嘩をしたことがあるけれども、現在では、落ち目になっているうえに、今度の喧嘩では、戦闘隊勢をととのえて、玉井家の表まで行きながら、盥で日本刀を洗っている金五郎に恐れをなして、退却したことは、知れわたっていたから、軽蔑されてしまっているのだった。

拍手が起った。お座つきが始まるらしい。舞台の幕があいた。地方の三味線と、鼓、唄い手などが六人、五葉松の背景のある舞台奥にならんでいる。

中央に、頭をさげて、お辞儀をしている銀杏返しの一人の女、踊り手が、顔をあげた。

金五郎は、びっくりした。

三味線と、地唄につれて、お京は踊りはじめる。水々しい銀杏返しの頭、裾を引いた市松模様の着物、手にひるがえす銀扇、豊醇に熟れきった身体のこなしが、柔軟に、音もなく、舞台のうえをすべって、さす手、引く手に、いいようもない妖しい色気がただよう。